美少女ゲーム/ノベルゲームの独自性に関する一考察〜アニメ/コミック/ノベルとの比較〜

/* 執筆意図1:あえて簡素な類型を例示することで,改訂のための叩き台とする */
/* 初出:http://rosebud.g.hatena.ne.jp/milkyhorse/20070213/1171373272 */
 
 音声・画像・文章を表現技法として融合的に用いるコンピューターゲームを,ここでは<ノベルゲーム>と呼ぶことにする*1
 <アニメ>*2 <コミック> <ノベル>といった他の表現媒体と比較するとき,<ノベルゲーム>の独自性は,音声・画像・文章を表現技法として融合的に用いるとともに,選択肢とタイミングによるインタラクティブを,同時に満たし得るという点に,見出される。
 ちなみに,<ノベルゲーム>は,東浩紀氏の唱える<狭義の美少女ゲーム*3と親和性が大きいが,決して同義ではない。
 そして,<ノベルゲーム>のゲーム性については,本稿とは別に論じる必要がある。(文責:ぴ)
 

 “この定理に関して,私は真に驚くべき証明を見つけたが,この余白はそれを書くには狭すぎる”*4

 


ノベルゲーム アニメ(映画) コミック(漫画) ノベル(小説)
音声 効果音(SE) *5 *6 ×*7 ×*8
劇伴(BGM) *9 *10 ×*11 ×*12
主題歌(OP) *13 *14 ×*15 ×*16
登場人物の声(CV) *17 *18 ×*19 ×*20
画像 静止画 立ち絵*21 *22 *23 *24 *25
止め絵*26 *27 *28 *29 *30
動画 *31 *32 ×*33 ×*34
視点 一人称*35 *36 *37 *38 *39
三人称*40 *41 *42 *43 *44
文章 人称 一人称*45 *46 *47 *48 *49
三人称*50 *51 *52 *53 *54
テキスト 台詞*55 *56 *57 *58 *59
地の文*60 *61 *62 *63 *64
シナリオ 一本道*65 *66 *67 *68 *69
マルチシナリオ*70 *71 *72 *73 *74
インタラクティブ 選択肢 選択肢あり*75 *76 ×*77 *78 *79
選択肢なし*80 *81 *82 *83 *84
タイミング 読者の能動 *85 ×*86 *87 *88
作者の誘導 *89 *90 *91 *92
コミュニティ*93 *94 *95 *96 *97

 

*1:拙稿「美少女ゲーム/ノベルゲーム/ビジュアルノベル/恋愛ADV」(2006年,d:id:milky_rosebud:20061114:p1)を参照されたい。

*2:正確には“シネマ”の方にするべきなのですが,ここでは便宜上,“アニメ”を用います。

*3:テキスト+立ち絵形インタフェースに依存し,選択肢選択以外のプレイヤー側の自由度をほとんどもたない,シナリオ分岐形恋愛アドベンチャーゲームITmedia美少女ゲームは『ゲーム』なのか」(2006年,http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0608/30/news096.html)東浩紀「少し記事を訂正」(渦状言論,2006年,http://www.hirokiazuma.com/archives/000247.html)を参照されたい。

*4:すいません,本当は何も(略)。

*5:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*6:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*7:定義上,現時点では,不可能である。

*8:定義上,現時点では,不可能である。

*9:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*10:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*11:定義上,現時点では,不可能である。

*12:定義上,現時点では,不可能である。

*13:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*14:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*15:定義上,現時点では,不可能である。

*16:定義上,現時点では,不可能である。

*17:あってもなくても,成立するが,あることの方が多い。

*18:なくてもかろうじて成立するが(無声映画の例がある),そんな実例は今や皆無に等しい。

*19:定義上,現時点では,不可能である。

*20:定義上,現時点では,不可能である。

*21:表情変化をする登場人物の画など。

*22:ノベルゲームにおける立ち絵の表情変化については,「To Heart」(1997年,Leaf)と「ONE〜輝く季節へ〜」(1998年,Tactics)の果たした役割が大きい。拙稿「美少女ゲーム作品論 ONE〜輝く季節へ〜」(2006年,d:id:milkyhorse:20060827:p1#c2-1)を参照されたい。

*23:なくても成立するが(ホントか?),良好な作画環境さえあれば,あることの方が圧倒的に望ましい。

*24:せっかくなので,最近の例として,あかほりさとる原作・桂遊生丸作画「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜」第4巻(電撃コミックス,2006年,ISBN:4840236291)。cf.d:id:genesis:20061123:p1

*25:理論的には可能なはずだが(パラパラ絵の例がある),そんな実例は皆無に等しい。

*26:いわゆる一枚画。イベントCG,挿絵に相当する。

*27:なくても成立するが(ホントか?),あることの方が圧倒的に多い。“イベントCG”と呼ばれるもの。

*28:あってもなくても,成立する。“止め絵”と呼ばれるもの。

*29:定義上,むしろ必要不可欠である。

*30:あってもなくても,成立する。“挿絵”と呼ばれるもの。

*31:実例は皆無に等しかったが,最近の例として,「School Days」(オーバーフロー,2005年,ASIN:B000A8T09O)がフルアニメ規格に挑戦している。

*32:定義上,むしろ必要不可欠なはずである。ところが,制作事情によっては,これを欠く実例もあるというところが,アニメの深遠である(ホントか?)。

*33:定義上,現時点では,不可能である。

*34:定義上,現時点では,不可能である。

*35:ここでは,登場人物からの視点をいう。

*36:“実況調一人称文体”と結び付くことからの必然である。

*37:実例は少ないが,たとえば,TVA「Kanon」(京アニ版,2006-2007年)が,発言者の背中越しに話しかける相手を正面に見据える構図を頻繁に用いている。

*38:実例は少ないが,部分的に登場人物からの視点が描かれることは,それなりに例がある。

*39:“実況調一人称文体”と結び付いた場合。

*40:ここでは,登場人物以外からの―いわゆる神の視点をいう。

*41:たまに主人公(一人称の人物)も描き込まれることがあるが,実例は少ない。

*42:どちらかといえば,三人称からの視点の方が圧倒的に多い。

*43:どちらかといえば,三人称からの視点の方が圧倒的に多い。文体が一人称のときでも,視点は第三者的なことが見受けられる。

*44:“三人称文体”と結び付いた場合。

*45:ここでは,いわゆる“実況調一人称”を指す。主人公から見た情景描写と内心の吐露が中心。涼元悠一「ノベルゲームのシナリオ作成技法」(秀和システム,2006年,ISBN:4798013994)127頁以下を参照されたい。

*46:プレイヤーキャラクター(PC)の存在を前提とするため,きわめて親和性が大きい。

*47:実例は少ないが,たとえば,TVA「涼宮ハルヒの憂鬱」(2006年)が,ほぼ原作通りに実況調一人称を再現することに成功している。

*48:少女漫画系では結構用いられているが,少年漫画系では少ない。

*49:新井素子による“新口語文”ないし“ライトノベル文体”。最近の典型例は,谷川流涼宮ハルヒの憂鬱」(角川スニーカー文庫,2003年,ISBN 4044292019)。

*50:ここでは,いわゆる“実況調三人称”を指す。

*51:理論的には可能なはずだが,そんな実例は皆無に等しい。

*52:圧倒的に,主流を占めている。

*53:特に,少年漫画系では主流を占めている。

*54:小説は,三人称文体の方がむしろ主流である。客観的な情景描写が企図されている。

*55:登場人物による発言と独白。

*56:理論的には,なくてもかろうじて成立する。そんな実例は皆無に等しいのだが,たとえば,唖障害を取り扱った「ONE〜輝く季節へ〜」(1998年,Tactics)・上月澪シナリオの例がある(それでも登場人物の独白はある)。

*57:理論的には,なくてもかろうじて成立するが,そんな実例は皆無に等しい。

*58:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*59:なくても成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*60:“地書き”ともいう。その効能については,涼元悠一「ノベルゲームのシナリオ作成技法」(秀和システム,2006年,ISBN:4798013994)124頁以下を参照されたい。

*61:なくてもかろうじて成立するが,あることの方が圧倒的に多い。

*62:ナレーションとして,導入することは可能だが,実例は少ない。ちなみに,登場人物による内心の独白は,地の文ではない。

*63:時間や場所の説明として,たまに用いられることがある程度である。

*64:定義上,むしろ必要不可欠である。

*65:作品単体としての意である。拙稿「美少女ゲームのマルチシナリオ分類例」(2006年,d:id:milky_rosebud:20061231:p1)を参照されたい。

*66:実例は皆無に等しかったが,最近の例として,たとえば,「鬼哭街」(2003年,ニトロプラス,ASIN:B0000CFXEG)や「ひぐらしのなく頃に」「ひぐらしのなく頃に解」(2002-2006年,07th Expansion)には,シナリオの分岐がない。

*67:圧倒的に,主流を占めている。

*68:圧倒的に,主流を占めている。

*69:圧倒的に,主流を占めている。

*70:作品単体としての意である。拙稿「美少女ゲームのマルチシナリオ分類例」(2006年,d:id:milky_rosebud:20061231:p1)を参照されたい。

*71:圧倒的に,主流を占めている。特に,選択肢によるシナリオ分岐型のマルチエンディングは,読者に対する訴求力が相当大きい。しかし,一本道シナリオでもノベルゲームが成立する余地があることは,否定できないのである。

*72:実例は皆無に等しかったが,最近の例として,TVA「ひぐらしのなく頃に」(第1期,2006年)がマルチシナリオ方式を採用している。

*73:実例は皆無に等しかったが,最近では,マルチシナリオ方式のノベルゲームがコミカライズされる際に,この傾向がある。また,畑健二郎ハヤテのごとく!」(小学館週刊少年サンデー』連載,2004年-)が,マルチシナリオ構成に準拠していると見る向きもある。

*74:理論的には可能なはずだが,そんな実例は皆無に等しい。あえて挙げるとするならば,ゲームブックということになる。

*75:ここでは,ストーリーを分岐させる役割としての選択肢を指す。マルチシナリオを分岐させる選択肢の意ではない。

*76:圧倒的に,主流を占めている。たとえば,ササキバラ・ゴウ傷つける性 団塊の世代からおたく世代へ―ギャルゲー的セクシャリティの起源」(2003年3月,角川書店新現実 vol.2』所収 /cf.2005年,d:id:genesis:20050728:p1)を参照されたい。

*77:定義上,現時点では,不可能である。

*78:理論的には可能なはずだが,そんな実例は皆無に等しい。

*79:理論的には可能なはずだが,そんな実例は皆無に等しい。あえて挙げるとするならば,ゲームブックということになる。

*80:ここでは,ストーリーを分岐させる役割としての選択肢を指す。マルチシナリオを分岐させる選択肢の意ではない。

*81:実例は皆無に等しかったが,最近の例として,たとえば,「鬼哭街」(2003年,ニトロプラス,ASIN:B0000CFXEG)や「ひぐらしのなく頃に」シリーズ(2002-2006年,07th Expansion)が挙げられる。

*82:定義上,当然の帰結視されている。

*83:定義上,当然の帰結視されている。

*84:定義上,当然の帰結視されている。

*85:いわゆるクリックによる“指先の感情移入”。紀田伊輔「ギャルゲーテキスト論」(2000年,http://www.tinami.com/x/review/01/page2.html)元長柾木「回想―祭りが始まり、時代が終わった」(2004年,波状言論臨時増刊号『美少女ゲームの臨界点』,ISBN:4990217705,cf.d:id:genesis:20050808:p1)155頁,sharan「25の補足として―ギャルゲー批評を考える2」(2006年,http://blog.livedoor.jp/sharan428th/archives/50543694.html)を参照されたい。また,媒体比較をした先行文献として,火塚たつや「ノベルゲームノレイアウト」(2003年,http://tatuya.niu.ne.jp/review/layout.html)を参照されたい。

*86:定義上,作中の尺やタイミングについて,視聴者の側に裁量の余地はない。

*87:いわゆる”ページめくり”。漫画を読む速さ,緩急,ページをめくるタイミングは,読者に任されている。

*88:いわゆる“ページめくり”。小説を読む速さ,緩急,ページをめくるタイミングは,読者に任されている。

*89:制作者は,いわゆる“スクリプト指定”によって,ゲーム内のテキスト表示や劇伴のタイミングを管理している。

*90:制作者は,いわゆる”絵コンテ”によって,作中の尺を管理している。ただし,放映枠に伴う尺の制約がある。

*91:作者は,“コマ割り”や“ページ単位での割り当て”によって,ある程度,読者のタイミングを微調整している。

*92:作者は,“「…」「―」”の挿入や“形式段落”,“ページ単位での割り当て”によって,ある程度,読者のタイミングを微調整している。平野啓一郎「本の読み方―スロー・リーディングの実践」(PHP新書,2006年,ISBN:4569654304)175頁を参照されたい。

*93:ユーザー相互間における攻略情報,批評,推理,解釈といった言辞の交換と共有。ゲームにまつわるコミュニティー空間まで含めてゲーム性なのではないか,という仮説も提示する見解として,ITmedia美少女ゲームは『ゲーム』なのか」(2006年,http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0608/30/news096.html)東浩紀「少し記事を訂正」(渦状言論,2006年,http://www.hirokiazuma.com/archives/000247.html)を参照されたい。

*94:あってもなくても,成立するが,あることの方が多い。

*95:あってもなくても,成立するが,あることの方が多い。

*96:あってもなくても,成立するが,あることの方が多い。

*97:あってもなくても,成立するが,あることの方が多い。