テレビアニメ『CLANNAD』(BS-i)第03話「涙のあとにもう一度」ネタバレおぼえがき(その4)

 関東圏・TBSでの放送から3週間遅れ(実質4話遅れ)の挙句,さらにBS-iでの放送からタイムラグがあるという,ひどく執筆のモチベーションが下がりっぱなしな箇条書き。何が得られるのかは,やってみないと分からない。長文を速記できる才能がほしい(切実に)。でも,がんばる。一応,テレビアニメ版・京アニCLANNAD』に関する言及のつもりである。(それでも原作のネタバレ注意)
 
 

4.世界の見方が広がり始めた岡崎朋也〜生活世界と幻想世界Ⅱが指し示そうとするもの〜

 第3話「涙の後にもう一度」Bパートで,演劇部説明会のスピーチ練習をするついでに,何かスピーチ向けのハウツー本を探そうと資料室を訪れた岡崎朋也古河渚は,その部屋を居場所にする宮沢有紀寧という少女と出会う。ここで,彼女と会話するうち,岡崎朋也は自分の世界に対する見方が変わりつつあることを示唆する次のような台詞を言う。

【朋也】「………」
【宮沢】「どうかなさいました?」
【朋也】「あ,いや。この学校,結構ユニークなやつ,多かったんだなって思って…」
【宮沢】「…?」
【朋也】「いや。この町は,かな」

・校舎内の資料室で,コーヒーメーカーから淹れた珈琲が飲めること自体,高校生の彼らにとっては,充分思いがけない出来事ではないだろうか。校舎内の,しかもめったに人の立ち寄らないであろう教室に,ガスコンロを使うくらい日常的な居場所にしている他人がいつもいるというのは,結構心惹かれるシチュエーションである。
岡崎朋也が,素で驚いた顔をしている。一見地味な出来事だが,彼にとっては,個性的な人間が身近にいるというという発見は,新鮮だったのだろう(本来,まともに他人と向き合えば,誰もが個性的な存在に映るはずなのだが)。

 ここで,岡崎朋也の台詞は,一気に「この学校」から,「この町」へと向けられる対象が飛躍する。この岡崎朋也の台詞回しは,テレビアニメ版のオリジナルだが,この感慨が彼の口から自然に出てくるべく,第3話の岡崎朋也は,学校の中だけでなく,学校の外でもたくさんの登場人物を見聞きして回っており,シナリオ構成の周到さを窺い知ることができる。




 第3話の岡崎朋也学校の外で会った人物は,古河秋生と古河早苗,伊吹公子芳野祐介の4人だが,この4人と出会うたびに,いちいち岡崎朋也は反芻しており,岡崎朋也にとって彼らの登場が印象深かったということが指し示されている。
 特に,芳野祐介との出会いについては,シナリオ構成の前後関係に共時(シンクロ)が成立していることは見逃せないだろう。彼の演説を一方的に聞かされた直後には,「なんてクサいセリフを堂々と言ってのける人なんだ」という微妙そうな感想を独白しておきながら,岡崎朋也は,彼から貰った名詞を見つめながら反芻した翌日,自分も古河渚に対して“クサいセリフ”を真面目に語りかけていくのである。
 

 
 そして,このような岡崎朋也の心境の変化についても,やはり第3話アバンタイトルの“幻想世界Ⅱ”はあらかじめ暗示を施していた。

(僕は『顔』を窓に向けた。)*1
(いつだって,逆光が差し込んでいた窓。)
(外の世界が見たかった。)

(TVA・京アニCLANNAD』第3話「涙のあとにもう一度」アバンタイトル“幻想世界Ⅱ”)

 「空虚な,静止した世界」であるはずなのに,幻想世界のガラクタ人形(僕の声)は,窓の外の世界―しかも,光が差し込んでくる源の方角ではないか―を見たいと思った。「何も生まれ」ない「終わってしまった世界」に,能動的な要素がもたらされようとしている。
 幻想世界と生活世界については,対照関係に立つであろうことが仄めかされ続けているに過ぎないが,相変わらず,対比と暗喩を踏まえた読解と相性が良いことだけは,確かに違いない。
 


 
 ちなみに,第3話の岡崎朋也学校の内で会った人物はといえば,


あれ? “ユニーク”のひとことで済ませてはいけないような気がしてきたぞ。重複しているし,人外も混ざっているような? まあいいか。とにかく,そういうことである。岡崎朋也の目に映る世界は,広がりつつあるのだ。(文責:ぴ)
 
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*1:括弧書きの行の地書きは,テレビアニメ版にはないが,相応する映像描写がある分を,原作から補ったものである。